【伝統工芸】金継ぎ体験に行ってきました【漆初体験】

外観
県央エリア(豊栄町、福富町、河内町)には、体験型ワークショップを提供するお店がたくさんあることをご存じでしょうか?

2020年4月に福富町にオープンした漆芸工房「KOUGEI椿」もその一つ。漆芸家・前坂成哲さんが営む工房で、金継ぎやマイ箸作り、ガリ版印刷、篆刻(てんこく)など、多彩なメニューで伝統工芸に触れることができます。

その中のひとつである金継ぎを、当サイトのリポーターが体験してきました。

金継ぎって何?

「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりした器を繋ぎ、生まれ変わらせる修復技法です。伝統的な金継ぎは欠けた部分を漆で補填し、その上からさらに漆を塗って金粉等を接着したものを指します。

KOUGEI椿では伝統的な金継ぎだけでなく、次のようにいくつかの体験コースが用意されています。「伝統技法を気軽に体験してみたい」という人はもちろん、「こだわっていいものを作りたい」という人にもうれしいラインナップなのではないでしょうか。

簡易的現代風金継ぎ

(90~120分)
漆以外の素材で欠けや割れを補填。漆以外の塗料で仕上げ。 3,000円(材料費込)

モダン金継ぎ

(2~3時間)
漆以外の素材で欠けや割れを補填。仕上げの粉の接着に漆を使用。漆を乾かす時間があるため簡易的金継ぎより長時間。 銀仕上げ4,000円
金仕上げ5,000円(金の面積により追加あり)

伝統的金継ぎ(欠け)

(4回コース 約1ヶ月)
欠けの補填にも仕上げの粉の接着にも漆を使用。漆を乾かす時間に応じて回数が決まる。
15,000円(材料費込み 追加あり)

伝統的金継ぎ 割れ

(6回コース 約2ヶ月)
割れの補填にも仕上げの粉の接着にも漆を使用。漆を乾かす時間に応じて回数が決まる。
20,000円(材料費込み 追加あり)

このほかにも次のようなワークショップが用意されています。

マイ箸作り

(60~120分)
自分の手の長さに合わせて素材を切断。シートに模様を切り抜き、漆を塗って銀粉を蒔く。仕上げは2週間後
3,500円(材料費込、送料別)

ガリ版印刷

(90分~)
昔の学校配布物などによく使われた印刷手法。謄写版(とうしゃばん)という印刷の手法で、ヤスリ版の上に鉛筆で下書きしたロウ引き紙を乗せ、ローラーを転がして模様を出す。
2,000円~

篆刻(てんこく)

(60~120分)
石の印材に文字や模様を彫って石のはんこに。書画や絵葉書の落款にも。
2,000円~(大きさにより変動)

大正浪漫の世界へようこそ

KOUGEI椿を訪ねると、趣のある建物の入り口で何やら見慣れた模様が出迎えてくれました。大人気漫画「鬼滅の刃」で、各キャラクターの象徴として使われている図柄のタペストリーがかけられています。

この建物が建てられた大正は、日本の伝統文様が多用された時代。マンガの舞台ともなっているため、それにちなんで取り入れたそうです。これを見ただけでうれしくなるファンも多いのではないでしょうか。

前坂さんの作品にも「市松」「麻の葉」「火焔」などの文様が多数使用されており、展示によってそれらが確認できます。

リポーターは個人的に鱗文様のキャラクターを推しているのですが、螺鈿蒔絵文箱(らでんまきえふみばこ)「夏の夜」という作品で、ヤモリの背景の地紋として使用されているそうです。

さっそく金継ぎ体験

金継ぎは割れたり欠けたりした器を繋ぐ修復技法なので、体験のときには傷んでしまった器を持参しましょう。リポーターは失念していたため、前坂さんにご相談して器を譲っていただきました。

真っ二つ

接着素材が器につかないよう、まず全体をマスキングテープで覆います。できるだけはみ出さないよう、ヘラで丁寧にならしたあとしばらく乾燥。この間に昼食をとりました。

マステレ

マステ全面

接着

接着素材が乾いたらヤスリで表面を滑らかにし、朱色の漆を塗って少し乾かします。この漆に金粉が付着するそうで、くるくると軽くこすると漆の部分がすぐに金色になりました。

漆塗り

漆乾いたところ

金粉

金粉

金粉がつくと、今度は漆を乾かします。漆は湿度がないと乾かない性質らしく、噴霧器で湿度を上げた状態が保てる箱の中に置き、しばらく乾かしました。その間に、漆の実から作った「漆コーヒー」をいただきます。香ばしい香りで口当たりが優しく、ほっと落ち着ける味でした。

加湿箱

漆コーヒー

漆コーヒー

漆コーヒーは作られている場所が少なく、あまり飲む機会がない貴重なもの。漆の実のなる場所は、ご近所の方が教えてくれたそうです。

前坂さんは、「この建物の大家さんをはじめ、ご近所の方皆さんがすごく温かく受け入れてくれて、人の繋がりに恵まれているなと思います。こうした体験や鬼滅の刃にまつわる展示などを通し、若い世代の人にも『漆ってきれいだな』『面白いな』と身近に感じてもらいたいですね」と話します。

仕上げは帰宅後

漆が完全に乾くには数日かかるらしく、帰宅後は教わった通り濡らしたティッシュとともにタッパーに入れました。乾き具合が判断できないので、2日程度と言われたところ、余裕をもって3日ほどタッパーに。取り出したあと、継いだところ以外についた金粉をこすり落として完成です。

タッパー

仕上がり

金色のラインがいいアクセントになっていますよね! 単に修復するだけでなく、そこに表情を持たせるところに、日本人ならではの美意識のようなものを改めて感じました。

体験は要予約ですが、空き状況によっては当日予約も可能です。日本の伝統文化に触れに、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

お申込み:KOUGEI椿 090-9414-8165
※年内はワークショップの受付終了。年明けは1月9日以降の開催を予定(変更の可能性あり)

漆の実
福富町内で採れた漆の実